言 え な か っ た 言 葉 


いつも


いつも


君を見ていた


でも


何も言えなかった








 え な か っ た 言 葉 










「おはようっ」


「お、はよ…っつーか、珍しいなぁ……」


「そう?そんな事ないけど?」


「そうかぁ…?」





―――いつもと同じ朝―――





「そうだよっ…さ、行こうっ」




―――いつもと同じ君―――





「おうっ……」




―――それがオレの幸せだった―――


















「シカマルっっ!!」


「んぁ?如何したんだぁ…?…んなでっかい声だして……」


「…………ん。なんでも…無いのっ……」


「…なんか変だぜ?…らしくねぇっつーか……」


「そんなこと…無いもんっっ…」


「……んなことあるって」


「こ、こんな所で話てたら遅刻しちゃうねっ…早く行こっ」


「ぇ、あ…おいっ……ーっ!?」






















なんか変だ……。


いつものじゃねぇ……。


何かあったのか?





































キーンコーン カーンコーン 







「あのさっ…シカマル…っ」


「………?」


「今日一緒に帰れ…る?」


「…ぇ……?」





珍しい…あのが俺と帰りたいだなんて……。

朝は家が近いからって理由で一緒に学校行ってたけどよォ……。

帰りはいつも別だったし…なんで今日一緒に帰りたいなんて言んだァ?









「悪ィ…今日、先生に呼ばれてんだ…多分居残り……」


「そ、そっか…それならしょうがないね…っ」


「今日じゃなくて…明日……な?」


「ぇ…う…うんっ……」


「…………?」


「それじゃ…バイバイっっ…」


「ぇ、おう……」


「………さよならっっ」





は走って教室を出て行った。


……いつもと様子が変だ………。


如何したんだ?…一体……。


































「…授業中、居眠りをした罰でこのプリントをやること!良いなっっ!!」


「……ヘイヘイ」


「返事は『はい』だろーがっっ!!」


「……ハイ」










はぁ…居眠りぐらい許してくれたって良いじゃねぇか……。


プリントなんてやる気になんねぇよ……。


の事が気になって集中できねぇ……。






















「あれ?シカマルっ!?」


「……サクラ?」





何故かサクラが俺のクラスに来た。


しかも俺が此処に居るのを驚いた様子で……。





「あ、イルカ先生ーっ…プリント届けに来ましたっ」


「ご苦労様だ。其処に置いといてくれっ」


「ハイ…ってシカマル、もう見送りには行ったの?」


「……見送りィ?」


「ば、ばかっ…行ってないの!?」







ば、馬鹿ッ!?


何だよ馬鹿って意味分かんねぇんだけどよォ……。










「あ、見送りってのか」


?…が如何かしたのかよっ」


「如何もこうもっ…今日、引越しでしょ!?」


「ひ、引越しっ…!?」






ガタッ


俺は椅子から立ち上がった。


だって引越しだなんてっ!!


聞いてねぇぞッ!?





「やっぱり知らなかったんだっ…」


「如何いう事だよっ…引越しって…っ!!」


「確か…ご両親の都合で遠い所に引っ越すって……」


「な、きょ…今日!?」


「うんっ…確か…えっ!?後30分しかないっ!?」







時計の針は4時30分を指していた。


出発の時間は5時。


後30分しかなかった。


の家まで27分……。


今から行けばギリギリ間に合うかもしれない。












「ま、マジかよっ…だけど……っっ」





俺にはまだ居残りプリントが残ってるしっっ!!


プリントが終わったとしても、ぜってー間に合わねぇッ!!


ど、如何すれば良いんだァ…っ!?












「……シカマルっ!!」



「イルカ先生…っ!?」



「5時半まで待ってやる。其れまでに帰って来ないとプリント増やすからなっ!!」



「せ、先生……ッ!!」



「ホラッ…早く行って来なさいよっ!!v」



「サクラッ……!!」






「あぁっ…必ず戻るぜッ!!」












イルカ先生、サクラ…有難うなっ!!


俺は夢中で駆け出した。


の家まで……。






どうか




間に合ってくれッ!!










































「…はぁっ…はぁっ…はぁっ……」





強い風が吹いていた。



俺の荒い吐息は風に掻き消される。



目の前には



何もかもが無くなった




空家が有る。











そうだ









間に合わなかった。



















日頃から足を鍛えてなかった俺が悪い。


自分の足の速さを理解してなかったようだ。



























「…………ッ!!」



もう名前を呼んでもは居ない。



それは分かっていた。




でも、現実と言うものを認めることは出来なかった。

















「ちくしょーーッ!!…何でだよッ…何でなんだよッ!!…ッ!!」






物にあたっても意味が無いのは分かっていた。


でも俺は空家になったの家の壁をひたすら叩いた。


の名前を叫びながら。








































「何でなんだよッ…ッ!!」







俺は地面に蹲った。







「俺まだ…お前にッ…!!」














「好きだって…言ってねぇじゃねぇかッ…!!」




















言えなかった言葉。





今さら後悔しても遅い。







何で俺に引っ越すって言ってくれなかったんだ?






言ってくれたら俺





伝えてた







好きだって








何で





何でなんだよッ!!




































俺は空家の前で泣き崩れた。



の名を泣き叫んだ。







その声は強い風に掻き消され、誰にも聞こえはしなかった。










だから俺は









自分の気が済むまで








泣いた







泣いた







泣き叫んだ













後悔の言葉を






自分の愚かさを





への気持ちを








































「…もう9時かよ……」



時計を見るともう9時だった。











「…イルカ先生…もう待ってねぇだろうなァ……」



悪い事しちまった…明日逢ったら誤らねぇと……。


サクラにも…迷惑掛けちまったし……。









二人に…何て言えば良いんだ……?






間に合わなかったなんて…恥ずかしいぜ……。





























………………。



オレ、もしお前に逢えたら絶対言から。








―――好きだって―――














END。










初悲恋物。如何だったでしょうか?

サクラとイルカ先生とシカマル。

この組み合わせ珍しいですね……。

二人はもう逢えないんですけど…この話のシカマルは信じているようです。

書いてて辛かったなぁ……でも悲恋は嫌いじゃないです。(待)

暗い話になっちゃたので次は明るく書きたいです。



05.5.30